ユーザアンケートによるECサイト収益率の改善事例

この記事の対象読者:ECサイト管理者
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あなたは自社サービスの利用ユーザに対してアンケートを取ったことはあるだろうか。B2C事業であればエンドユーザに対して直接ヒアリングする。B2B事業であっても可能であればエンドユーザに、難しければエンドユーザと接する機会がある社内の営業担当や電話オペレータなどのCS部門でも良いかもしれない。直接エンドユーザに電話をしたり送付商品へアンケートを同梱するでも良いので、エンドユーザがあなたのウェブサイトを通して、あなたのサービスを利用した理由をぜひ知っていただければと考える。私の経験上、その行為によるメリットは大きい。

誰もがウェブサイトを持つ時代、ユーザの選択肢はどんどん多くなっている。私はB2B、B2C問わず数多くの業種にクライアントを持っている。そしてエンドユーザに確認したところ、よほど特殊な業種を除き、エンドユーザがあなたのサービスを使うにあたり事前に3サイト以上を見て比較した上であなたのサービスを選んでいるのだ。

これがリアルな実店舗であれば、あなたのサービスはここまで比較はされないかもしれない。しかし舞台はオンライン。たった数クリックで他のサイトと比較できる環境では、ユーザは徹底的に比較をした上であなたのサービスを選ぶという訳だ。

このような環境下、あなたのサービスはエンドユーザから選ばれる必要がある。ここで最も重要な要素が、あなたのウェブサイトで謳っているライバルと比較しての強み、すなわち競争優位性なのだ。そして、エンドユーザにとって何が競争要素になるのか、かつこの競争優位性を高めるために絶対的に必要なのがユーザを理解することであり、この理解のために有効な手段がユーザの声を聴くということだ。

ここでは、私が自社運用している海外ブランド品の通販サイトにおいて、エンドユーザへのヒアリング(ユーザアンケート)により成約率(訪問ユーザが注文する割合)改善につなげた方法を5つのステップで紹介していく。

  1. 改善目標値の設定
  2. ユーザアンケートの実施
  3. 仮説を立てる
  4. 仮説に基づいて施策を行う
  5. 仮説検証と継続する試行錯誤

1.改善目標値の設定
この話をすすめるにあたって、まずはユーザアンケートによるサイト改善を行おうと決めた理由からお伝したい。2016年12月現在、1ドル117円前後で推移している。私が海外ブランドの通販サイトを始めた当初は、1ドル100円以下であった。

海外からの仕入れビジネスということで、1ドル100円を下回る円高時には、順調に利益を出すことができていた。この為替レートが円安に振れ、仕入れ価格の上昇にともなう販売価格の上昇、結果として販売数が減少し大きな危機感を覚えた。このため、サイトの成約率を大幅に改善し、注文数を増やす必要性が出てきたのが、ユーザアンケートにもとづくサイト改善をしようと決意した理由だ。

まずは当時の成約率、平均的な1注文あたりの粗利、1買い注文したユーザの再注文の割合などの現状分析を行った。その結果、当時の社内レートを適応すると、成約率を0.6%ptほど改善する必要があることが分かった次第である。高額な海外ブランド商品ということもあり、もともと成約率はそこまで高くはない。そんな中で0.6%ptの改善というのはかなりの大仕事だと感じた記憶がある。

2.ユーザアンケートの実施
このところのウェブ解析界隈では、「ヒートマップ」とか「ユーザビリティテスト」はては「人工知能を用いたABテスト」といった言葉まで聞くようになった。それと比較すると、なんとも原始的な響きのある「ユーザアンケート」であるが、個人的にはサイト改善において、もっとも本質的で大きな力を秘めているのが、ユーザの声をきくこと、つまり「ユーザアンケート」だと考えている。

当時、ユーザアンケートを実施するため、購入して下さったお客様に1,000円相当のポイントを付けて回答を依頼。多くのお客様の購入に至った理由を集めていった。(なおユーザアンケートと言うのはその性質上、購入にいた至ったユーザを中心とした声で構成されることになる。購入に至らなかったユーザの声がデータとしてあがってこないため、分析には注意が必要だ。なんらかの理由があり注文などの成果まで進んだユーザだけのサンプリングデータということだ。詳しくはこちらの記事を参照いただければ。)

冒頭に述べたようにユーザは購入の前段階で最低でも数サイトの比較を行っている。ユーザが我々のサイトから購入して下さったということは、我々のウェブサイト・サービスが、他の似たようなウェブサイトとの戦い・比較に打ち勝ったということだ。なぜ比較された上、勝つことができたのか、ここにサイト改善のヒントがある。すなわち、購入ユーザに聞くべき質問はひとつ、『なぜ他にも似たような店舗がある中で私たちの店舗を選んでくださいましたか?』という質問だ。

ユーザアンケート用紙

回答結果は幅広く、色々なご意見をいただけた。その中で特に私が気になった購入理由が以下の2つ。

      『定期的にブログが更新されていて信頼できた』
      『アクシスさんのホームページをみて安心した』

といった声だ。

3.仮説を立てる

これら意見から見えてきたのは、どうやらお客様は、商品が本物かどうか、偽物を掴まされないかどうかといったことを我々、店舗運営者が考えていた以上に気にしているということだ。そんな視点でブランド品の販売サイトのデータを見ると、特定商取引法を見ているユーザが我々が保有する他事業のウェブサイトと比較して相対的に多いことも分かった。特定商取引法のページを見て、会社の実態を探ろうとしていたのだろう。(一般的に偽物を扱う海外ブランド品の通販サイトの会社実態は怪しく、電話番号はおろか住所すら書かれていない、また支払い方法も銀行振り込みのみ、といった具合だ)

我々のECサイトでは定期的なブログ更新を行っている。また、自社ウェブサイトもデザインを意識しブランディング向上を図っている。これらの積み重ねにより、お客様に「この会社からなら購入しても大丈夫だろう」と考えていただき、他ウェブサイトとの比較に勝ち、選んでいただけたのかもしれない。仮説が立った瞬間である。

4.仮説に基づいて施策を行う
サイト訪問ユーザは、我々が扱っているブランド品の真贋を気にしているという仮説。だからこそ成約率改善のポイントは安心して買ってもらえる信頼性の演出、本物を扱っていることを信じていただける表現である。このような考えのもと、サイトの表現方法を改善した次第。

まずは、アクセス数の多かった会社概要のページ改善に着手。もともとは特定商取引法に基づく表示プラスαの味気ない情報が書かれているだけだった。これでは信頼感の醸成は難しい。そこで私は、会社概要として『会社紹介~私たちについて~』というページへと刷新。サイトに訪問し購入を検討している人に、安心してショッピングをしてただけるよう、オフィスの風景をはじめ、普段の仕事振りからスタッフ全員の顔写真まで掲載した。そしてこの完成した会社紹介ページを、最も目立つようにグローバルメニューというウェブサイトの最上段に設置。『逃げも隠れもしませんよ』というスタンスを表現し、偽物を取り扱っていたら出来ないような宣言として、想いを表現したのだ。

リニューアルした会社概要ページ

このページ作成により特定商取引法のページからの回遊性と、このページを通過ユーザの購入率の確かな向上が認められた。特定商取引法のページを見るような慎重かつ購入意欲の高いユーザに対して、会社の実態を感じていただけるようになり、多少なりとも不安を払拭でき、購入の後押しになったのではないかと考えている。

しかし上述の通り、これはあくまでも特定商取引法のページを見るほどに購入意欲の高いユーザに対しての施策である。他のサイトで欲しい商品の在庫が無かったといった特別な理由でもあるのだろう。

購入可能性があったにもかかわらず、特定商取引法ページをわざわざ見るような動機や発想が無ければ、結局は不安感は払拭されないままだ。そこで並行して偽物と本物の徹底検証ページを作成することにした。本物のタグはこうなっていて、偽物のタグはこのようなタグ。本物の箱はこのような箱で、偽物の箱はこのような箱。本物のレザーのニオイと、偽物のレザーの鼻にツンとつく悪臭。そんな情報をひとつにまとめ、本物と偽物の違いを、見つかっただけ徹底的に記載したのだ。これら施策の結果、ひとまず当初の目的であった成約率の0.6%pt改善を果たすことができた。

本物と偽物の比較ページ

5.仮説検証と継続する試行錯誤

ここまでで当初の目標は達成するすることができた。しかし、そのままの為替レートで安定する保証はどこにもないし、いつ他のライバルが新規参入してきて更なる価格競争になるかも分からない。そんな危機感を感じた私は、更なる追加施策として、『返品交換保証』を導入することにしたのだ。ユーザアンケートにより、ユーザが商品の購入前に本物かどうか悩んでいる、そんな姿を確実に思い描くことができた。この姿をしっかりと想像しながら試行錯誤を繰り返していくことが重要だと考えている。

返品交換保証のイメージ図

もちろん、この施策は本物を扱っていることの直接的な証明にはなりえない。しかし、返品ができるということは、本物であるということの間接的な証明になる上に、購入検討者に対する安心感の醸成にもつながると考え実行した。

この制度の導入直後は、返品条件や返品方法に関する問い合わせが増えた。そして実際に、20人に1人くらいの割合で、5%ほどの方が想像していた商品と違ったなどの理由により返品するようになり、オペレーションが煩雑化してしまったのだ。返品率5%という高さに正直焦り、また制度の悪用と思われる事例も少なからずあり対応に追われたのを覚えている。しかしトータルで見て、注文数が確実に増えたのもこの施策後だった。

注文が増え、返品対応も増え、店舗運営のオペレーションコストが増えた。そこで、よく聞かれる問い合わせ内容が掴めたタイミングで、質問数が多いものから優先し、返品・交換保証ページにコンテンツとして追加していった。どういった場合に返品できるのか、そしてできないのか、タグを取った場合にはどうなるのか、またサイズ感が違う場合、何回まで交換してくれるか、など。

返品・交換は我々にとって大変なだけではなく、お客様にとっても負担なはずだ。そもそもイメージ違いでの返品やサイズ交換といった双方にとっての負担が極力発生しない方が絶対に良い。そこでお客様目線に立った上で、利用シーンやサイズ感、色合い等がよりわかるよう、商品写真を撮り直した。合わせて、商品の説明ページも詳しく作り直したのだ。

例えば、サイズ感や色合いが確実に伝わるよう、写真の撮る角度や照明の当て方を工夫。そしてサイズ感がわかるように人物を組み込んでの写真を追加した。特にドレスに関しては、サイズに関する質問やサイズがフィットしないことによる返品が多かったため、以下の画像のような、妊婦さんを含む5人の方の試着レポートを作成。その結果、返品率を2%まで下げることに成功したのだ。これは事業者目線で我々にとってメリットがあるだけでなく、お客様にとってもイメージ違いやサイズ違いのミスマッチを防ぐという点で良かったと考えている。

ドレスの試着イメージ

この返品率に関してはその後も改善を進めて来た。一例として、返品方法の具体的な手順仕方というカードを、手書きのメッセージに添えて保証書として同梱し、お客様が安心できるよう工夫。

成約率改善のための返品交換保証カード

また梱包する箱を一般的な輸送用パッケージから、高級感が漂う箱に変えたところ、さらに返品率が低減したのだ。返品方法が具体的に書かれていることにより安心し、かえって返品をする気持ちがなくなったのだろう。また同時に高級感のあるパッケージにしたことで偽物ではないという安心し、返品率の低減につながったのだと考えている。

ブランドを意識しての梱包箱の改善

今では返品率は1%を切るレベルになり、同時に成約率もさらに改善された(引き続き試行錯誤中だ)。サイトの成約率に問題を感じた場合、サイトへの訪問ユーザの質を疑うのではなく、自分たちのウェブサイトにボトルネックがあると仮定しよう。そして、どこにボトルネックがあるのか探るために購入者の声を聞くこと、すなわちユーザアンケートが有益なのだ。

まとめ

この例に限らず、様々な事業主様のウェブコンサルを通して、多くのお客様に触れて感じたことがある。それは、お客様・エンドユーザの購入前の悩みや不安は、我々サイト運営者が想像している以上に深いものがある、ということだ。

今回、お客様の心の声である『安心して本物を購入したい』という想いに、ユーザーアンケートを通して触れる事ができた。その想いに対して、徹底して本物であることを訴求する施策を行い、大きな改善につなげることができた。ウェブサイト運営に行き詰まった時、新しいテクノロジーを追いかけたり、データ解析といったウェブ上で出来ることではなく、まずは可能な限りお客様に直接ヒアリングすると突破口が見えてくると考えている。

  1. 改善目標値の設定
  2. ユーザアンケートの実施
  3. 仮説を立てる
  4. 仮説に基づいて施策を行う
  5. 仮説検証と継続する試行錯誤

書籍紹介

こちらの事例は以前に出版したKindleにて紹介した記事を一部、新しい情報をもとに書き直したものです。書籍内では、アンケート用紙をもちいてのユーザの声の獲得方法の他に、4つのデジタル手段を使ってのユーザの声・意図の汲み取り方法と、集めた声の活かし方について紹介しています。

こちらの記事が参考になった方には、お役に立てる内容かと思います。よかったらどうぞ。


3 Comments - Leave a Comment
  • TK -

    楽しく読ませて頂きました!

    ご存知、この街は都内に比較しお洒落なお店や品揃え豊富なお店は少なく、妻は大手通販サイトで「返品前提条件」で、注文することも多々あるようです。(時々返品待ちの商品が玄関に置いてあり、ナンだこれ?と驚きます。)

    わたしは無精者なので、返品作業の手間を考え、気軽に注文などできないです。ここは男性と女性の違いとかですかね(^_^;)(男性でなく、わたしだけかな?)

    また、私はといえば為替の関係で旨味は少なくなりましたが、国内でなかなか販売していないものなどを、ebayやAliで購入する際に、セラーの評価や口コミ、企業情報を頼りにするしかないので、情報を参考にするのは、なるほど皆がそうなんだな!と思いました。(わたしの生活で、国内サイトで輸入品を購入するチャンスは少ないので上記で比較)

    逃げも隠れもしない。って点ですと、某インターネット価格比較サイトで、「店頭販売有」なんてのを見ると、最悪なんかあっても乗り込める(苦笑)なんて安心できますね(^_^;)

    マーケティングって、深いし面白いな!って感じる記事でした(*^^*)

    また楽しい記事を期待しています!

    • hira-ken -

      うわー、まさしくユーザのリアルな声、コメント、めちゃくちゃ勉強になります。やっぱり口コミや評価って大事だし、そこをしっかりと表現して伝えることの重要性を再認識したよ。どうもありがとう!!!また頑張って記事書きます^^

  • TK -

    いやいや。その道のプロの方に「ありがとう!」なんて言わると不思議な気分です(^^;

    でも、為替で粗利率が厳しくなって見直してみた。とか、お客様にアンケートフォームでなく、お手紙出してる泥臭さ。とか、電脳集団AXISさんでも、失礼ですが、お世辞にも超カッコいい!とは言えない部分をカミングアウトされてる所は、非常に好感が持てます。(自動車メーカーでさえCS調査はお手紙ですし、個人的に、ある程度の設問とフリー記載スペースがあるお手紙がBESTだと思います。)

    わたしも3年間、CSセクションで業務していたので、「お客様って、自社に対しどんなことを感じ求めているんだろ?」ってのは気になってますね。

    それと、業界が違えど、どんな仕事や業務でも、PDCAサイクルを回さなければならないんだな! と私こそ勉強になりました。ありがとうございましたm(__)m

    長文失礼しました!

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